【よくある質問】父は長男の私に全額遺贈し弟には何も残しませんでした。弟は遺留分侵害額請求をして金額が確定しましたが税務上の手続きはどうしますか?
本記事の内容は、原則、記事執筆日(2019年7月2日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
父は長男の私に全額遺贈しましたが弟には何も残しませんでした。弟は遺留分侵害額請求をして金額が確定しました。この後に税務上の手続きはどうしたらいいでしょうか?
もし、相続税の申告までに遺留分侵害額請求がなされなかったとしても、遺言の内容で相続されたものとみなしていったん相続税申告、納税を行います。その後に遺留分侵害額請求が行われた場合は当事者で税額の調整を行うことにした場合を除き、税務申告の内容について修正を行うべきと考えられます。
遺留分を侵害している遺言書であってもそれはただちに無効となるのではなく、遺留分を持つ者から遺留分侵害額請求されて初めて返還が認められるものであり(遺留分が侵害されていることを知ってから1年間、相続開始から10年間という時効がある)、最終的に遺言書の内容でそのまま相続分が確定する可能性も十分にあるからです。
▶遺留分侵害額請求とは?遺留分侵害額請求との違いや期限・対象を詳しく解説
もし甲が更正の請求を行ったにもかかわらず収めるべき相続税の申告をしていない場合は税務署長が税額の決定通知をすることがあります。 よって、甲による上記の更正請求を行う際に乙は遅滞なく自分自身の相続税申告を済ませられるように準備しなければならないということです。
とりあえず、遺言の内容で相続税の申告を行う
たとえば、遺産分割協議が終わっていない場合は「とりあえず法定相続分(民法で定められた相続分)で相続した」とみなした計算で相続税申告を行いますが、遺留分を侵害した状態の遺言書がある場合は法定相続分ではなく、遺言書の内容通りに相続したとみなして相続税申告を済ませます。遺留分を侵害している遺言書であってもそれはただちに無効となるのではなく、遺留分を持つ者から遺留分侵害額請求されて初めて返還が認められるものであり(遺留分が侵害されていることを知ってから1年間、相続開始から10年間という時効がある)、最終的に遺言書の内容でそのまま相続分が確定する可能性も十分にあるからです。
▶遺留分侵害額請求とは?遺留分侵害額請求との違いや期限・対象を詳しく解説
遺留分侵害額が成立したら更正等の手続きを行う
もし、遺留分侵害額請求をされた側(甲)がすでに相続税の納付を済ませていた場合、自分の相続する財産が減ったことにより最初の申告よりも納税するべき金額が減ることになります。甲は遺留分侵害額請求により返還するべき金額が確定したらそのことを知った日の翌日から4カ月以内に税務署長に対し、相続税の課税価格および相続税額について更正の請求をすることができます。 遺留分侵害額請求を行った、つまり新たに相続財産をもらえることになった側(乙)は、期限後申告として自分が取得した相続財産についての相続税申告を行うことになります。もし甲が更正の請求を行ったにもかかわらず収めるべき相続税の申告をしていない場合は税務署長が税額の決定通知をすることがあります。 よって、甲による上記の更正請求を行う際に乙は遅滞なく自分自身の相続税申告を済ませられるように準備しなければならないということです。
当事者同士で調整する場合は更正しなくてもよい
上記の更正手続きは、義務ではありませんので必ず行わなくてはならないわけではありません。もし、当事者同士で「遺留分侵害額請求自体は行うものの、甲が支払った税額を考慮して金額を調整する」「遺留分侵害額請求を行い、別途、支払い済みの税額の当事者間で精算する」などの処理を行う場合もあるからです。ご希望の地域の専門家を探す
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