父親が300万円の車を買ってくれたことがあるが、昔の話でも生前贈与となるか?
父親が300万円の車を買ってくれたことがあります。結構昔の話なんですが、生前贈与となりますか?
「父に300万円の車を購入してもらう」は相続における特別受益に該当する場合があります。特別受益を受け取っている相続人はそれを無視して相続をおこなうと不公平になるため、特別受益分を差し引いた金額を取得します。
生前贈与をどこまで相続の際に考慮に入れる(=参入する)かというのは、民法と税法でも考え方が違います。 民法の上で(つまり遺産分割協議の上で)「特別受益」に参入する際には何年前のものでも関係ありません。
遺産分割協議にあたって考慮する「特別受益」とは?
「特別受益」とは、被相続人(亡くなった人)から、その生前に「住宅の取得資金を援助してもらった」「独立開業資金を援助してもらった」「結婚の際の支度金などをもらった」または「遺贈を受けた」といった一部の相続人だけが特別に得ていた利益のことを言います。
民法の条文上「生計の資本として贈与を受けた」とされているため、自動車の贈与もこの特別受益にあたると解されます。
普通の生活のための仕送りや、学費を支払ったことなどは特別受益にあたりません。ただ、どこまでの範囲が特別受益なのかの判断は難しいこともあり、被相続人の資産、収入、社会的地位などさまざまな要素を考慮してケースバイケースで判断されるべきものです。
特別受益にあたる贈与については、「持ち戻し」と言って相続受益分を合算して計算します。具体的には遺産分割協議の際、次のように計算します。
- 相続開始時に特別受益にあたる金額を遺産総額に加算します。(みなし相続財産)
- みなし相続財産を法定相続分(民法で定められた相続分)や指定相続分で配分します。
- 特別受益者については特別受益の金額を上記で配分した金額から差し引きます。
特別受益の具体例
具体的に特別受益に該当するのは、以下のようなケースです。
- 生活費の援助(扶養義務の範囲を超える援助)
- 不動産の贈与
- 車の贈与
- 結婚する娘に持たせる持参金
- 養子縁組したときに家を用意
- 事業を始めるときの援助
- 1人だけ特別に留学した場合などの学資の援助
- 無償で家に居住させていた
特別受益に期間の定めはない
特別受益に参入される分の生前贈与には特に参入する期間の定めなどはなく、「婚姻や養子縁組のため」「生計の資本として受けた金額」「遺贈」に該当するものであればすべて参入します。
よって、相談者のケースでも生前贈与が30年前の分であっても参入しなければなりません。
被相続人が特別受益を別枠として贈与することもできる
ただ、被相続人のもともとの意図が「この分の贈与は他の兄弟よりも多めにあげたい」という意思であることもあるはずです。そのように扱ってほしい場合は、「特別受益の持ち戻しの免除」といって、この分の生前贈与や遺贈は特別受益として扱わないでほしいということを遺言で示すこともできます。
生前贈与加算は3年から7年に延長
ちなみに、相続税を計算する際にも生前贈与額を相続財産に含める必要がある場合があります。それは、「相続開始前3年以内の贈与財産」についてです。3年以内の贈与であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算することに注意が必要です。
またこの生前贈与加算が2024年1月1日以降3年から7年に延長されました。生前贈与を少しでも考えている人は、早めに計画を立て実行することをおすすめします。
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