【よくある質問】家出同然の兄が突然現れて、遺産をよこせと言ってきた。どうしたらいい?
家出同然で出て行った兄が、親が亡くなったら突然現れて遺産をよこせと言ってきました。これまで親の介護も一切せず、連絡ひとつよこさなかったのに虫が良すぎるのでは?遺産を渡さなければいけませんか?
遺産を受け取れる人は生前の被相続人(亡くなった人)との人間関係には一切関係なく、民法で定められた範囲の者となっています(法定相続人)。よって、お兄さんがいくら親との関係を絶っていたからといっても相続人から外されるわけではありません。
法定相続人になる人がふさわしくない場合もある
相談者のケースのように、親との関係が希薄だった相続人がいきなり相続の場面になって現れ、自分の取り分を主張するということはよくあります。
また、たとえ連絡を取っていたとしても、兄弟の間で介護の程度などで差があるため、同じ割合で相続することに不満を持つ者が出てくることは何ら珍しいことではありません。
ただ、法定相続分とは絶対にその割合で相続しなければならないというものではなく、遺産分割協議を行って調整をはかることが普通ですので、できれば話し合いで円満解決を目指したいものです。
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遺産分割協議による調整
遺産分割協議とは、法定相続人全員が遺産の分け方について合意するための話し合いのことです。ただ、全員が同じ場所に集まらなくてはならないわけではなく、合意して遺産分割協議書に署名、実印の押印さえできれば問題ありません。
遺産分割協議の機会に各相続人が自分の主張を述べ合うことにはなりますが、このように何かもともと問題がある家庭ではなかなか話し合いだけでまとまらないことも多く、その場合は次の段階である家庭裁判所の遺産分割調停手続きになります。
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可能であれば親が遺言者によって配慮するべき
もし、このように生前から「特定の相続人との関係が悪化している」などの状況がわかっているのであれば、遺産を遺す親の側も配慮する必要があります。
できれば「公正証書遺言」を作成し、各相続人との人間関係や金銭の関係を考慮した上で遺産の配分を指定しておきたいものです。そして、「付言」という項目を使ってなぜその配分にしたのかを詳しく説明し、相続人の理解を求めるようにしておきます。
ここまでやっておけば少なくとも何もしないよりは揉めごとになる要素が減るはずです。
「うちの兄弟は仲がいいはずだ。お互いに良いように分けてもらえばいい。」など、楽観しがちなのが親というものですが、表面上仲良くしているように見えるのは「親の生きているうちは心配をかけたくない」という配慮に過ぎない場合もあります。
亡くなってからではもう手の打ちようがありませんので、自分が元気なうちにできる準備を行うように心がけましょう。
遺留分に注意
公正証書遺言を作成したとしても、兄に遺産を全く渡さないことは難しいでしょう。なぜなら一定の相続人には最低限の相続財産の取り分である「遺留分」が保証されているからです。
遺留分を請求できる相続人の範囲は、兄弟姉妹(甥姪)以外の相続人です。この相続人は遺留分を侵害されていた場合に「遺留分侵害額請求」をすることができます。
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