兄弟喧嘩をせずに遺産分割して、相続をスムーズにおこなうコツはある?
父はいつも「もし自分が死んでも、相続で兄弟喧嘩をするなよ」と言っています。相続分割がスムーズにおこなわれるコツってありますか?
相続紛争の原因は財産の量ではない
多くの「相続紛争」は、財産の多寡に関係なく起こります。「相続の対策は万全ですか?」とたずねるとほとんどの人から「うちは争うような財産もありませんし…」という回答が返ってきますが、それは認識不足と言わざるを得ません。
相続において問題になることの一つに「税金対策」もありますが、それはほんの一面に過ぎません。大半の家庭で問題になってくるのが「分けづらい財産」「それにもかかわらず公平な分割を求める相続人の感情」といった点なのです。
たとえば、相続財産が持ち家と土地だけというのは非常によくあるパターンです。
親が不動産を相続させられない子供への代償になるような死亡保険金等を準備していれば別ですが、現代にあっても多くの親が「長男が相続すればよい」「うちの子供たちは仲が良いから大丈夫」など、楽観的すぎる予測をしているのです。
▶相続で揉めないために|公平な財産分与をするために知っておきたいこと被相続人(亡くなった人)の遺志を明確にしてもらう
兄弟姉妹というのは、親が生きているうちは親に心配をかけまいとしてお互いの不満をそれほど表面化させないものです。しかし、いざ親が亡くなると「お兄ちゃんだけ大学に生かせてもらった」とか「妹はまったく親の介護にタッチしていない」とか若い頃から最近のことに至るまでさまざまな不満を抱えているものです。
そして、それは親自身が「どのように相続させたいか」の遺志を示さずに亡くなることにより紛争として表面化してきます。「お父さんはこの家に私が住み続けてよいと言っていた」とか「弟は親と同居している時に預金を勝手におろしていた」とかそれぞれの言い分を主張して平行線となるのです。
そうならないためにも、親自身が「公正証書遺言」で自分の希望する遺産の分け方、そしてその根拠を明確にし、相続人全員がそれを読んで納得できるような形にしておかなくてはなりません。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。自分で書いて作成する遺言書を自筆証書遺言と言います。また、遺言の内容を誰にも明かさずに、かつ、遺言の存在だけが公証人によって証明される形式の遺言を秘密証書遺言と言います。
公正証書遺言を作成する場合は、公証役場において、公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを文書にします。
本人が認知症になる前に対策をしておく
相談者の場合も、お父様がまだお元気なのであればぜひ「喧嘩をするなと理想論を掲げたところでまったく役には立たないこと」「円満な相続のために遺言書が必要である」ことを説得しておくべきです。
万一、お父様が認知症にでもなってしまえばもう遺言書を作ることもできません。まだ早すぎるか?というくらいの時期に着手しておくことが遺言書の有効性について争いにならないためにも大切なことなのです。
生前贈与や生命保険で相続対策ができる
「父が亡くなる前から財産を分与しておきたい」「遺言書だけだと心配」という場合は、生前贈与や生命保険によっても相続対策をすることができます。
生前贈与であれば、暦年課税方式による贈与の場合、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。また贈与税の申告も不要です。
生命保険では、被保険者と保険料の負担者が同じ人で、受取人が相続人の場合は、生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象になります。しかし、このとき相続人が受け取った死亡保険金については一定額(500万円×法定相続人の数)が非課税となります。
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