【よくある質問】父が存命なうちに私の分の相続財産を遺産分割してもらっておいても問題ないですか?
父が存命なうちに私の分の相続財産をもらっておいても問題ないですか?
お父様が亡くなっていないので前もって遺産分割をするということはできません(生前の遺産分割は法的に効力がありません)が生前贈与という形では可能です。「相続時精算課税」であれば遺産の前倒しという意味合いで生前贈与が可能です。ただし、生前贈与にあたっては、「税務的な問題」や「他の相続人との公平性に関する問題」を考慮する必要があります。
贈与税対策をどうするか?
遺産の前倒しという意味合いであれば「相続時精算課税」という生前贈与の方法があります。相続時精算課税は60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫(推定相続人)に対して行われた贈与につき、2,500万円までを非課税とすることができます。贈与者が亡くなった時にその贈与された財産を相続財産と合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する制度です。なお、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税が適用されます。
この方法は「贈与した財産を、相続発生の時に相続財産に戻して考えなくてはならない」ことになっています。もっとも、もし贈与した分を戻したとしても、最初から相続税がかからない(=基礎控除の範囲内に収まる)人であればまったく問題はないといえます。
何も考えずに生前贈与を行ってしまうと、後から莫大な贈与税に驚くことがありますので、贈与の前には「減税、非課税となる特例を受けられないか」についても必ず検討しておかなくてはなりません。 例えば住宅購入資金について贈与を受ける場合、「住宅資金等の贈与を受けた場合の非課税」といって、父母や祖父母から20歳以上の子や孫に住宅購入等の対価にあてるための金銭を贈与された場合でも、一定の範囲であれば非課税となります。こちらは贈与された期間により非課税限度額が決まっており、平成32年3月31日までは「省エネ住宅は1,200万円」「それ以外の住宅は700万円」と定められています。
なお、相続時精算課税と住宅資金等の贈与を受けた場合の非課税制度は併用することもできます。
▶相続時精算課税制度の改正とは?基礎控除110万円や生前贈与加算の延長についても解説
他の相続人との公平性を図れているか?
たとえば推定相続人が2人の場合で、お父様の財産が3,000万円と仮定した場合、相続時精算課税を用いて相談者が2,500万円を受け取ってしまうと、相続時に他の相続人との間で紛争が生じる可能性が高くなります。
もしお父様が他の子供達との不公平を生じてでも相談者に2,500万円をあげたいということであれば生前贈与した上で遺言書を作ります。その中で「特別受益(ある相続人だけが生前に特別の贈与を受けたこと)の持ち戻し(相続財産に戻して考えること)の免除」をするという方法があります。ただ、これによっても他の相続人との摩擦を避けることは難しいことが多いでしょうから、諸事情を考慮した上で慎重に行う必要があります。
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