【よくある質問】認知症の父に無理やり書かせた遺言書でも有効なのでしょうか?
姉が、認知症の父に無理やり遺言書を書かせました。そんな遺言書でも有効なのでしょうか?
認知症の人が作成した遺言書が有効かどうかは、遺言書の作成当時にその人が遺言能力を有していたかどうかで判断されます。それにはお父様の遺言書が「自筆証書遺言」「公正証書遺言」など、どの類型の遺言書だったかによって有効、無効の判断における難しさは変わってきます。
お姉様の態度によっては相談者だけで解決することが難しく、法律家の手を借りる必要が出てくることもあります。
自筆証書遺言であればまず形式的要件を確認
「自筆証書遺言」といって、自宅で自分で作成する遺言書があります。
これは、「全文を自筆で書くこと」「署名・押印があること」「日付が明確であること」など様々な形式的要件があり、これを一つでも欠いていれば内容が本人の意思通りだったとしても無効になります。
相談者の場合、もし自筆証書遺言だったのであればまずこの点について確認するべきでしょう。
それらをすべて満たした遺言書があったとしたら、次に作成時点で遺言者本人に意思能力があったか(法的判断をできる状態にあったか)という点を検証することになります。
自筆証書遺言は「検認」手続きが必要
自筆証書遺言については裁判所に「検認」という手続きを申立てなくてはなりません。検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
検認はあくまで証拠保全という意味しかないので、検認を経たことで遺言内容の有効性が保証されたわけではありません。
▶遺言書の検認とは?遺言書を見つけたときに知っておきたい検認の全知識
遺言者が意思能力があったかどうかの判断
遺言者に意思能力があったかどうかは、以下のような事情を考慮して総合的に判断されます。
遺言の内容が複雑か
「全財産を○○に相続させる」など遺言内容が簡単な内容であれば意思能力があったと判断されやすくなるでしょう。
逆に遺言内容が複雑で、財産との食い違いがあった場合、判断能力を疑われる可能性があります。
知能検査の点数
認知症の知能検査に長谷川式認知症スケールがあります。これが30点満点中20点以下の場合は認知症の疑いがあるとされています。もっとも、あくまで目安ではあるので10点以下であっても意思能力が認められた場合もあります。
医療記録や介護記録から確認
医師による診断書や介護記録から、遺言書の作成当時に判断能力があったかどうか、財産の管理ができていたかなどを確認することができます。
公正証書遺言であれば無効にするのは難しい
一方、「公正証書遺言」が作成されていた場合はどうなるのでしょうか。この有効性を覆すのは一般的にはかなり難しいと考えられます。
なぜなら、公正証書遺言は本人と証人が公証役場で(または自宅や病院への出張で)公証人に面会し、本人確認と意思確認を行っていることが前提だからです。
ただ、過去の裁判では無効とされた例も存在します。
たとえば、公証人による生年月日の確認などで大きく本人が申告を誤った(=意思能力に問題あり)にもかかわらずそのまま公正証書遺言作成を進めてしまったり、公正証書遺言作成時点で複数の医療機関の診断書がすでに認知症の状況にあることを認めているような場合です。
公証人の意思確認の厳しさも実は画一的ではなく、人によっては一方的に遺言書を読み上げ、本人に異存がないかどうかを聞くだけということもあるため、公正証書遺言だからといって絶対に無効にならないわけではないことがこのような判例からわかります。
ただ、やはり本気で有効性を争うのであれば弁護士に依頼して「どのような方法で無効主張するか」を相談したほうが無難でしょう。
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