10年程前に私の名義に変更してもらった父の預金にも相続税がかかりますか?
10年前に父が私のために貯金してくれていた通帳を渡され、私の名前に名義変更してくれました。先日父が亡くなったのですが、これは相続税がかかりますか?
税務調査により税務署が実質的に被相続人の財産に属していたと判断した場合は、相続税の課税対象となります。
預金は誰のものと判断されるか
親名義の預金口座から子供名義の預金口座へと資金を移動させることはしばしば見受けられます。口座名義人と真の預金者が異なる預金を名義預金と言います。名義預金は相続税の課税対象になります。
ただ、資金を移動した後に親が死亡し相続が発生した場合に、その移された預金は相続人固有の財産となるのか、あるいは親の財産であり相続財産となるのか判断が難しいところです。
通常、相続人間であれば、実質的に被相続人の預金と扱って遺産分割の対象とするのか、名義人の預金として扱い遺産分割の対象にしないのか話し合いで決することになります。
しかし、相続人間の協議と税務署の判断は異なりますので注意が必要です。
すなわち、相続人間の協議では預金を「相続人固有の財産であり遺産分割協議の対象としない」と決定していた場合でも、税務署は「被相続人の財産であり、相続税の課税対象になる」と判断することがあるのです。
もしこのようなケースで相続人の自由な主張を認めてしまえば、いくらでも相続税を免れられることになってしまうからです。
税務署は、預金の実質的な所有者が誰にあったのか、預金の管理状況や預金名義人の認識など、総合的に判断した上で相続税の課税対象とするのか否かを決定することになります。
相続税の対象から外す方法はあるのか?
親から子への贈与が認められれば、子供の預金と認定されますので相続税の対象とはなりません。
贈与とは契約の一つですので、原則もらう人とあげる人とのお互いの合意で成立することになるのですが、預貯金の場合は少し注意が必要です。
- 贈与契約書を作成して親名義の預金口座から引き出し、子供の預金口座に振り込む。 →贈与をしたという事実を客観的に分かるように証拠を残しておくことが重要となります。
- 預金通帳は子供自身で管理をし、届出印も親のものと別にして子供が保管する。 →親が通帳や印鑑を管理していると、実質的には親の財産と判定されやすくなります。
- 年間110万円を超えるときは、子供のほうで贈与税の申告を行う。 →贈与税はもらう方(受贈者)が納付するので、必ず子供側で忘れずに申告をする必要があります。
いくら子供が「親から預金をもらったお金だ」と主張しても、上記のような手続きを踏んでおかないと子供の預金とは認定されず、親の財産として相続税の課税対象とされてしまいます。もし贈与の意図で金銭の移動や口座の名義変更を行う場合は特に気を付けなければなりません。
生前贈与は7年前まで持ち戻し加算
さらに2023年度税制改正により、相続税における生前贈与の加算の対象が、亡くなる3年以内という従来の期間から7年以内に延長されました。2024年4月1日より適用されます。
生前贈与加算とは、亡くなる直前の一定期間の贈与は相続財産に加算するというものです。これまでこの期間は3年でしたが、7年に延長されました。
ただし、単に期間を延長しただけではありません。相続開始前の3年以内の贈与が加算対象となるのは従来どおりですが、4年以上前のものは、その期間の生前贈与の額から100万円控除した額が持ち戻しの対象です。
今回のご質問は10年ほど前の贈与のため、生前贈与加算の対象にはなりません。しかし名義預金としてみなされるかどうかは税務署の判断によるところでしょう。
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