株は現金に替えておいた方が相続対策になりますか?
私の父は株式投資が趣味のようです。いろいろと銘柄をもっていると聞いています。私は株に詳しくないので今後父には株を売って現金にしてほしいと思っています。ちなみに株は現金にしたほうが相続対策になったりしますか?
遺産の構成というのは各家庭によりさまざまです。
中には故人の趣味が株だったので、遺産のほとんどが株式であるという場合も考えられます。相続財産としてもらうのにどちらが得かということは一概には言えませんが、状況によっては株式を相続させるのがあまり好ましくないこともあります。
株式を相続する際の注意点
株式は不動産よりは換金しやすい資産であるものの、現金よりも扱いづらい点があります。株も遺産額が一定を超えた場合に相続税がかかりますし、上場株式か非上場株式で評価方法も異なります。
株式が相続財産の中に含まれる場合はどのように相続されるのかを考えてみましょう。
被相続人(亡くなった人)が死亡すると、たとえば300株があったとしたら最終的な帰属先が決まるまでは300株すべてを相続人全員で共有することになります。
相続人が3人いたとしても100株ずつ当然に分割されるとは限りません。
こうなると、相続する人が決まるまでは1人の者が代表で権利を行使する者として会社に通知したうえで議決権等を行使することになりますが、その代表者を決めるにあたっては共有者の持分価格の過半数の賛成がなくてはなりません。
つまり、最終的な相続人が決まるまでは非常に不自由な状態におかれるということです。 また、現金がまったくない状態で被相続人が亡くなると、相続人が葬儀費用などすぐにかかってくる現金を支出できない場合に困ることにもなります。
株式を相続する流れ
相続が発生すると、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税申告をしなければいけません。結果的に相続税申告の必要がなかったとしても、早めに相続手続きをおこなっておくと良いでしょう。
相続人調査
法定相続人が誰になるのか調べることを相続人調査と呼びます。
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や、除籍謄本、改製原戸籍謄本などを漏れがないようすべて取得します。こうすることで、認知の有無や養子縁組などの過去もすべて確認でき、遺族が把握していない相続人がいないかどうかも確かめられます。
相続財産調査
次に、相続財産にどんなものがあるのかを調査します。土地や建物などの不動産、金融機関の預貯金、株式などの有価証券などのプラスの相続財産と、借金や未払いの税金などのマイナスの相続財産を調査します。
株式を保有していた場合、どのような株をどれだけ持っているのか詳しく調べます。故人が取引をしていた証券会社がわからない場合、「証券保管振替機構」に問い合わせると、証券会社を教えてもらえます。
遺産分割協議
相続人が複数いて遺言がない場合は、遺産分割協議により財産の分け方を決定します。相続人全員が合意したら、全員が署名・押印した遺産分割協議書を作成します。
株式の名義変更手続き
株式を相続する人が決まったら、証券会社で名義変更手続きをします。名義変更にあたっては、相続人名義の証券口座が必要です。相続人が口座を持っていない場合は新規口座を開設しなければなりません。
証券口座の開設にあたっては、名義変更依頼のほか、戸籍関係書類や遺産分割協議書、印鑑証明書などの必要書類が必要になります。
株式の分割方法
相続人が複数いた場合、株式はいくつかの方法で分割することができます。
現物分割
株式を換金せずに株式のまま受け継ぐことです。
代償分割
1人の相続人がまとめて株式を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法です。
換価分割
株式を売却して売却代金を相続人間で分ける方法です。相続人が投資に興味ない場合などは換価分割が選ばれます。
結論として、現金と株どちらが得か?
株式はご存知の通り、その価値が大きく変動するものです。
相続時点では非常に優良な銘柄だったのが、放置しておくと時間とともに価値が下落してしまうことも十分に考えられます。
現金でも確かにインフレリスク(物の値段が上がって、相対的にお金の価値が下がること)があるといえばその通りですが、株式のように乱高下するものではありません。
被相続人側から見た場合、株式を相続人にそのまま渡したいのであれば、株取引に関する知識を持っている相続人に相続させ、株のことがわからない相続人にはその他の財産を相続させるという遺言書を作っておいた方がよいでしょう。もしくは株式を売却して現金にしてしまったほうが、相続人にとっては扱いやすいでしょう。
また、譲り受ける側が知識を持たずにいきなり株式を相続してしまった場合、もちろんそれをきっかけとして株取引の知識を学んだ上で持ち続けるという選択肢もあります。
しかしまったく株取引など興味もないということであれば、頃合を見て一部または全部を売却して現金化したり他の財産に組み替えた方が財産が大きく目減りする心配がなくなります。
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