遺産分割後、1年経ってから新たな相続人が現れた場合は?
質問者:M.O
遺産分割協議が相続人を戸籍で確認した後に行われたのであれば後から相続人が現れるというのは非常に稀ですが、そのようなことがないわけではありません。相談者のケースでは愛人の子供が認知されたのがいつなのかによって結論が異なります。
認知は生前・遺言どちらでもできる
婚外で出生した子供を「非嫡出子」といいますが、そのような子供は通常、父親の認知によってその父親の子供としての身分を獲得します。(母親との親子関係は分娩の事実により当然に発生するというのが判例による結論です)
認知はもちろん父親の生前にすることもできますが、生前に認知することがはばかられるような状況もありますので遺言によって認知することも認められています。その場合、実際に遺言書の存在が判明してから「遺言執行者(遺言書の内容を具体的に実現するための手続きをする者)」が戸籍法の定めるやり方で役所に対して認知の届出をすることになります。
いつ認知されたかにより再協議の要否が決まる
相談者の場合、愛人の子供の認知がいつされたのかがポイントになります。もし遺産分割協議の前にすでに認知されていたのであれば、それは元々その子を入れて行うべき遺産分割協議の手続きに瑕疵(欠陥)があったということになりますのでやり直しが必要という結論になります。 そして、すでに遺産分割協議を終えた後に遺言書による認知で相続人が増えた場合にはその遺産分割協議自体は有効であり、増えた相続人に対しては価額のみを支払えばよいというのが民法の規定になっています。
遺産分割協議は、戸籍を精査してから始めることが大切
上記のように、遺産分割協議を始める時点で相続人の一人を見落としていることもごく稀にあります。被相続人(亡くなった人)の戸籍は死亡から出生まですべてを辿りますが、平均寿命くらいまで生存した人の分であれば明治・大正時代など古いものも含めて平均5、6種類の戸籍が存在します。これらをすべて追っていき嫡出子、非嫡出子を特定しなければならないのですが、特に古い戸籍を見慣れない人は大切な部分を見落としてしまうことが多いのです。 通常、金融機関や法務局は相続手続の際に相続人を特定するための戸籍一式を厳しくチェックしますので申請人から出されたものの不備はほぼ100%見抜くことができます。
しかし、一般の人が取り寄せた戸籍で相続人を漏らしたまま申請されてしまった相続登記申請が法務局でもそのまま誤って完了してしまい、後からトラブルになったという事例もないわけではありません。 よって、できれば遺産分割協議を始める前に弁護士や司法書士など、法律専門家の目を通してもらう方が安心です。
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