【よくある質問】遺産分割協議がまとまる前に遺品整理と形見分けを進めていい?
母が生前、「私が死んだら指輪を形見にあげる」言っていました。母は賃貸アパートに住んでいたので、家賃もかかるし、持ち物を整理して形見分けしたいのですが、親族から遺産分割協議が終わるまで待つよう言われました。先に形見分けをすると問題ですか?
お母様の思いを実現したいという相談者の気持ちとは別に、法的には「被相続人(亡くなった人)がこう言っていた」ということだけを理由に形見分けなどをできない場合があります。財産的価値があるものについては、取り扱いに注意が必要です。
遺言書がなければ法的効力はない
そもそも、形見分けとは形見分けとは近親者や友人などに、故人が愛用していたり思い出の詰まった品などを「形見」として分配し、品物を通して故人を偲ぶことです。
しかし、形見の中でも財産的価値を持つ物はいったん法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員の共有状態になっています。そのため、勝手に分配することはできず、遺産分割協議をしてから形見分けをしましょう。
お母様が生前に法的に有効な遺言書を遺していれば別ですが、相続人の一人に対して「このように遺産を分けてほしい」と言っていただけだと、遺産分割協議が必要になります。
つまり、相続人全員が内容につき合意して(手紙などでの合意でもOK)各人が実印を押印し印鑑証明書を添付しなければそれぞれの手続きの窓口で受け付けてもらえないということです。
もし、相談者がお母様の意向を反映させたいということであれば、遺産分割協議を通じて他の相続人にお母様の生前のお話を伝えて説得するしかありません。
もちろん、単なる遺品の整理にとどまるのであれば相談者が一人で行っても構いませんが、その際、遺産内容をリスト化(財産目録)するなどして他の相続人から疑義を持たれないようにすることも大切です。
賃借人が死亡した場合はどうなるのか
なお、被相続人が居住していた物件が賃貸だったという場合は、被相続人の死亡により当然に賃貸借契約が終了するわけではありません(賃貸借契約を終了させるまで家賃が発生し、支払い義務が生じます)。契約関係としては、被相続人の死亡によって借主としての地位が共同相続人に不可分(分けられない状態)で相続されていることになります。
よって、大家からの賃料請求が相談者一人に対して行われたら相談者はすべてを支払わなければならず、他の相続人の支払義務の分については立て替えている形になりますので後から請求し、相続人間で精算することになります。
相続人が契約を継続する意思がそもそもない場合であっても相談者が一人で賃貸借契約を解除するわけにはいかないため、無駄な賃料を発生させないためには少しでも早く他の相続人との話し合いを持つ必要があります。
形見分けは財産の内容に応じて行う
「形見分け」というのは「遺産分割」のひとつの類型ともいえますが、形見分けの中でも財産価値のあるものとないものでどう扱うべきか分けられます。
市場に出しても明らかに価格がつかないと思われるような遺品であれば別ですが、もし少しでも価値があると考えられるものは遺産分割協議が調わないうちに処分することは避けたほうが良いでしょう。ひとまず遺品を整理するにとどめて、遺産の全貌をはっきりさせたうえで早めに話し合いを進めることを考えるべきでしょう。
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