相続税を払う現金がない場合は?
質問者:M.M
相続税は基本的に現金・一括納付となっていますが、実際にその現金が準備できない相続人もいます。そのような場合、対処法として「物納」「延納」を検討する必要が出てきます。
相続税納付は相続人全員に連帯責任がある
相続税は、相続発生から10カ月という非常に短い期間に相続財産を調査し、相続人を確定して遺産分割協議を済ませ、申告・納税までするという非常にタイトなスケジュールになっています。相続税法34条では「同一の被相続人(亡くなった者)から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、当該被相続人に係る相続税又は贈与税について、相続又は立場により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる」としています。つまり他の相続人が支払えなかった相続税を他の相続人が支払わなければならないことがあり、支払えなければ財産に強制執行を受けることもあるということです。もちろん、このこと自体に納得がいかない人も多いでしょうが、明文で連帯責任が規定されているため裁判などでもこれを覆すのは非常に難しいと考えなくてはなりません。
分割で納税する「延納」とは?
本来なら被相続人の生前に相続税納付用の現金を準備しておくのが筋なのですが、対策をしないまま相続が発生してしまうケースもあります。そのような場合には、分割納付である「延納」という制度を利用できることがあります。ただ、延納は次の条件を満たすことが必要です。
・延納申請書を相続税の納付期限までに提出すること
・相続税が10万円を超えていること
・現金で一度に納めることが困難な理由があること
・担保を差し出せること(延納税額が50万円未満、延納期間が3年以下の場合は担保不要)
なお、延納の期間は原則5年以内です。そして利息にあたる「利子税」を納めなくてはなりません。 また、申請しても税務署により条件を満たさないとして却下されることもあります。
お金の代わりに物で払う「物納」とは?
一定の条件を満たした不動産や債券などがあり、税務署に物納申請書を提出して認められれば現金以外の方法で納付できることもあります。ただ上記の「延納」によってもすべてを納付しきれない場合でなければ物納はできませんし、物納の対象にする財産は相続人の都合で決めることはできません。具体的には次のような状態の財産は物納できないことになっています。
・抵当権などがつけられている財産
・争いになっている財産
・複数の者で共有する財産
また、延納と同様に申請しても却下される場合も多く、現実的にはかなり認められにくい手続きであると考えておかなければなりません。
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