【よくある質問】葬儀費用を亡くなった本人の預金から使ったら相続放棄はできない?
葬儀費用を亡くなった本人の預金から使ったら相続放棄はできませんか?
相続が発生した後、被相続人(亡くなった人)の名義だった預金を引き出して使うとその使い道によっては単純承認とみなされ、後に借金が多く相続放棄したいと思ってもできなくなることがあります。葬儀費用については状況に応じて判断することになります。
相続の「法定単純承認」とは何か
相続が発生したことは、親族だけではなく被相続人にお金を貸していた債権者など周囲の人にも関係があります。
そこで、法律関係の安定をはかるために民法では「法定単純承認」といって「こういう行為をすると相続を承認したことになる」という一定の事由が定められています。法定単純承認に該当すると相続放棄をすることはできません。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続の際に被相続人の資産や負債などの権利を一切引き継がず放棄することです。
相続放棄のメリット
相続すると損する遺産を相続しなくて済むこと、遺産分割協議に参加しなくてよくなることなどです。
相続放棄のデメリット
その一方、デメリットとしてはプラスの財産とマイナスの財産のすべてを放棄しなければならないこと、家庭裁判所での手続きが必要なことなどです。
法定単純承認にあたる例とあたらない例
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分した場合」には相続を承認したとみなされてしまいますが、何が「処分」にあたるのかには下記のような基準があります。
相続放棄以外にも遺産分割という側面から考えても、故人の財産については非常に注意を払う必要がありますので安易に手を付けるのは避けましょう。
処分にあたる(=相続放棄できなくなる)ものの例
- 被相続人の預金口座のお金を引き出して、相続人自身のために使う
- 被相続人の保有していた賃貸物件の賃料振込口座を相続人の口座に変える
- 被相続人の保有していた動産、不動産について売却、損壊、抵当権設定などをする
- 被相続人の持っていた債権(人に貸していたお金などを取立てる権利)を行使して取立て、相続財産として適切に保管せず相続人が受領する
- 資産価値のある物の形見分け
処分にあたらない(=相続放棄できる)ものの例
- 被相続人の財産を処分したが、死亡を知らなかった
- 資産価値のない物の形見分け
- 被相続人が生前に受けていた治療の費用支払い、葬儀費用の支払い、仏壇や墓石等の購入
- 被相続人の持っていた債権を行使したが、相続財産として適切に管理していた
つまり、被相続人の身分、地位などから考えて「適切な金額の葬儀費用」を引き出して支払ったということであれば法定単純承認にはあたらないため、その後で相続放棄することも可能です。
ただし、相続放棄は相続開始を知ってから3ヵ月以内に行わなければもはや手続きすることができなくなります(理由によっては裁判所に期間伸張の申立てができます)。負債が大きいことがわかったらすみやかに書類を準備して家庭裁判所に申立てるようにしましょう。
故人の預金はおろせるの?
通常、銀行は被相続人の死亡を知るとすみやかに預金口座を凍結して預金をおろせないようにします。しかし銀行が被相続人の死亡を知らない状態では口座にロックがかかっていないため、カードなどでおろすことは事実上可能です。
ただ、むやみに被相続人の預金をおろすと、後で借金が発覚した際に相続放棄できなくなりますから気をつけなくてはなりません。
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