相続放棄や限定承認の場合、先祖代々のお墓や仏壇も引き継げなくなるのでしょうか?
質問者:M.S
「祖先の祭祀を主宰する者」という役割
相続財産とは、被相続人(亡くなった人)の名義だったすべての財産のことを指します。
つまり、金銭的価値のある物すべてを対象として遺言に従って引き継ぐか、法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)の間で遺産分割協議を行って引き継ぐ人を決めるのです。
ただ、これらとは別に扱われるのが仏壇や仏具、墓石などご先祖を供養する宗教的役割を持つ物です。
もちろんこれらにも財産的価値はあるのですが、一般的な宗教観から考えると他の物と一緒にすることに抵抗感があるため、「祖先の祭祀を主宰する者」が引き継ぐことになっているのです。
具体的に誰がその役割を果たすのかというと、必ずしも長男というわけではありません。
第1順位が「被相続人が指定した者」、第2順位が「慣習によって定める」、最後に「慣習が不明なら家庭裁判所が定める」というのが民法の定めになっています。
相続放棄・限定承認とは何か
通常の相続財産については、法定相続人は特に意思表示をしなくても被相続人の死亡によって自動的に相続人となります。
しかし、家庭の事情によっては相続したくない人もいるはずです。
一番わかりやすい例では、親に借金があったような場合です。相続ではプラスの財産だけではなく負債も同様に引き継ぐことになってしまうので、全体としてマイナスになる場合は「相続開始を知ってから3カ月以内」に家庭裁判所に相続放棄の手続きを取ることで、財産を引き継がないかわりに負債を免れることもできます。(実務的には事情によりこの期間を延長できる場合もあります)
同様に、全体としてプラスかマイナスかがわからない場合には「限定承認」という手続きを取ることで、負債を弁済してもなお余りがある場合にだけ相続するということができます。(ただし、限定承認は手続きが複雑なため弁護士などへの依頼で多額の費用がかかり、さらに相続人全員で行わなければならないためハードルが高くなります)
宗教的役割を持つ物は相続放棄等の影響を受けない
これらの相続放棄や限定承認を行うと、通常の財産は受け取れなくなりますが、祖先の祭祀を行うための仏壇や仏具については影響を受けません。
よって、祖先の祭祀を主宰する役割を与えられた相続人であっても、親の残した借金が多いのであれば早めに相続放棄の手続きに着手するべきといえます。
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