税理士・弁護士・行政書士・司法書士の士業ネットワークを持つ「鎌倉新書」が解説
準確定申告遺産分割協議
5
専門家への相談がおすすめ
2・3ヶ月〜
税理士
法定相続人
故人が住んでいた地域の税務署
相続税申告について、基礎知識や手続きの期限・詳細などを、士業ネットワークを持つ「いい相続」が分かりやすく解説します。
相続税申告は被相続人が亡くなってから10カ月以内にしなければいけないルールがあります。しかし、申告に到る準備と手続きには、とてつもない手間と労力がかかります。その手順についてご紹介します。
親や配偶者など大切な人を失えば、誰もが悲しみに打ちひしがれることでしょう。しかし、大切な人が亡くなったその日から、相続は始まるのです。残された家族が踏むべき手続きは数多くあります。その日を迎えたときに混乱することがないよう、相続税申告の基礎は今から押さえておきましょう。
そもそも相続とは、亡くなった人が所有していた財産や権利・義務が移転することです。相続財産には土地、建物などの不動産のほか、有価証券、現金、預貯金、自動車などがあります。注意したいのは、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれるということ。借金や負債、損害賠償責任などがこれに当たります。相続でこれらの債務を負うことがある点も頭に入れておきましょう。
相続税の申告・支払いの期限は10ヶ月以内
まず、いつまでに相続税の申告・支払いをしなければならないのか。その期限を見てみましょう。
これは法律で決まっていて、相続税の申告及び支払いは被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から、10カ月以内に行わなければなりません。死亡を知った日が1月1日なら11月1日、6月15日なら翌年の4月15日が期限となります。死亡を知った日とは、通常、被相続人が死亡した日です。
気を付けなければならないのは、申告だけでなく、支払いも一括納付で済ませねばならないこと。申告は申告書を税務署に提出、支払いは税務署、金融機関、郵便局で行います。
▼相続税申告は、税理士に依頼すると安心です▼
では申告・支払いの期限を過ぎてしまったらどうなるのでしょう。
まず、1日でも遅れてしまうと、追徴課税があります。追徴課税は2種類あり、1つ目が申告書の提出が遅れたことに対する追徴課税(無申告加算税)、2つ目が納税が遅れたことに対する追徴課税(延滞税)です。
無申告加算税で言えば、期限後に自主的に申告したのか、税務調査で申告したのかによって税率が変わってきます(自主的に申告したほうが税率は低い)。また悪質な隠ぺい等が認められる場合は、重加算税が課せられます。
期限を過ぎてしまうことのもう一つのリスクは、相続税の軽減特例が使えなくなることです。例えば小規模宅地等の特例、農地の納税猶予などは、期限内に申請しないと使えないので注意しましょう。
10カ月のうちにしなければならないことをまとめます。
まず必要となるのは、住んでいる市区町村役場への死亡届の提出。期限は死亡から7日以内です。また、死体火(埋)葬許可証交付の申請や世帯主変更届の提出も必要です。
次に3カ月以内にしなければならないのが、相続をするかしないかを決めること(相続放棄・限定承認)。そのためにはまず以下の手続きが必要となります。
まず遺言書の有無の確認。遺言は民法上の相続人や法定相続分よりも優先され、遺産分割協議が不要となるためです。遺言書がない場合は、民法に定める法定相続人の制度に従い、相続人を決めます。
ここでポイントとなるのは、相続人が相続するかしないかを選ぶことができる点です。マイナスの財産(債務)もあるため、この点が重要になってきます。被相続人の財産と債務すべてを承継するのが「単純承認」。プラスとなる財産の範囲内で債務を承継するのが「限定承認」。一切相続しないのが「相続放棄」です。「限定承認」する場合は相続人全員の同意が必要で、3カ月以内に申述書を家庭裁判所に提出しなければなりません。「相続放棄」には同意は不要ですが、申述書の提出は必要です。
遺産を相続するかしないかを決定するためにも必要なるのが、遺産の調査です。財産や債務がいくらあるかを調べ、「相続財産目録」を作成します。亡くなった人が確定申告する必要があった場合は、相続人が代わりに死亡日までの所得金額と税額を計算し、確定申告をしなければなりません。この期限が死亡から4カ月以内です。これを「準確定申告」と言います。
相続人が相続するかどうかを決めたら、次に遺産分割協議を行います。誰がどの財産・債務を引き継ぐかを決めるわけです。それを元に相続税の計算をし、各自が申告書を作成します。
相続をすると、必ず相続税を払わなければならない。こう考える人がいるかもしれませんが、実は違います。遺産総額が基礎控除額以下ならば課税されないのです。相続税は基礎控除額を超えている場合に、その超えた分に対して課税されます。この基礎控除額は一律ではなく、法定相続人の人数によって変わります。計算式は次の通りです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば相続人が3人なら基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれ以下なら非課税。6,000万円ならば超過した1,200万円に対して課税されることになります。
では遺産総額がいくらになるのか。財産の調べ方や相続財産の評価方法について見ていきましょう。財産の種類ごとに評価方法をまとめたのが下の表です。
まず不動産は、土地であれば国税庁が定める路線価をベースにした評価もしくは、毎年6月ごろに送られてくる固定資産税の納税通知書を確認しましょう。そこに所在地や評価額などが記載されています。建物も同様に固定資産税の納税通知書で確認できます。預貯金や有価証券は、通帳や取引明細をもとに金融機関から残高証明書を発行してもらいます。
生命保険は少し複雑です。被相続人(死亡した人)が契約者で、保険金の受取人になっている場合は、死亡保険金や解約返戻金が相続財産となります。しかし、被相続人が契約者でも相続人が受取人になっている場合は、相続財産にはなりません。ただし、税の計算上は「みなし財産」となり、相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の人数」までの死亡保険金については相続税が非課税となる枠があります。
相続税の計算は4つのステップで行います。
最初のステップが各人の「課税価格」の計算。相続財産から非課税財産と債務、葬式費用を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産の額を加えます。これが課税価格となります。次に行うのが、各人の課税価格の合計額から基礎控除額を差し引くことです。これが「課税遺産総額」となります。3つ目のステップは、課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定し、相続税の総額を計算することです。最後に各人の納付総額を計算します。まず相続税の総額に各人の相続の割合を乗じて、「各人の相続税額」を計算する。これに2割加算や、配偶者控除、未成年者控除などの税額控除を加減して、「納付すべき税額」をはじき出します。
相続税申告書は原則として、相続人全員で1つの申告書をつくります。申告書は第1表から第15表までありますが、第1表を見れば相続財産の総額や基礎控除額、各相続人が納付すべき相続税額などがわかる仕組みになっています。
申告書の記載の順序は、各人の相続税額を計算したときの流れに沿って行うと考えれば理解しやすいでしょう。主な表としては、まず第9表の生命保険金の明細、11表の課税財産の明細、13表の債務・葬式費用の明細を記入します。次にこれらをもとに、第2表の相続税の総額を記入します。最後にまとめである第1表を記入するのです。通常、相続税の申告書は作成が複雑であるため約9割の申告で税理士が作成している状況です。
▼相続税申告は、税理士に依頼すると安心です▼
相続税申告書を作成・提出するのに、どんな書類が必要なのでしょう。それらをまとめたのが下の表です。
例えば身分・遺産分割に必要な書類としては、被相続人及び相続人の戸籍謄本、遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などがあります。財産に関するものでは、不動産ならば評価にあたり使用した公図、登記簿謄本、固定資産税の納税通知書などが必要。預貯金や有価証券に関しては、金融機関が発行する相続開始日現在の残高証明書を用意しましょう。
相続税の申告を自分で行うか、税理士に依頼するか、悩むところでしょう。自分で行えば、税理士に支払う税理士報酬を節約できます。一方で税額の計算などは煩雑で、自分で行うには難度が高そうです。
どちらを選ぶか判断の難しいところですが、国税庁の統計でも相続税申告の場合には約9割の申告で税理士が関与していますので、相続税が過大になってしまうリスクを回避したい方が多いということが分かります。また遺産総額が5,000万円以下であるような場合なら、相続税額が大きくならないため、申告内容が間違っていた場合でも追徴税額が小さくて済むという側面があります。逆に複数の不動産がある、遺産総額が5,000万円を超えるといった場合には税理士に依頼したほうが無難といえます。
また自分で行った場合のデメリットとして、特例や税額控除、財産の評価減などのルールを活用できずに、相続税を支払い過ぎてしまうことがある点は頭に入れておきましょう。
相続税以外の税金ならば口座引き落とし(振替納税やダイレクト納付など)ができますが、相続税は現金を一括で納めることになっているので注意が必要です(税額1,000万円以内であればクレジットカード納付が可能です)。納める先は、申告書を提出する税務署か金融機関。納めるときには納付書が必要ですが、金融機関にはない場合がありますので、利用するときには事前に用意しておいたほうが安心です。また現金一括で納めるのが難しい場合には、例外として分割払いの延納、物で納める物納が認められることがあります。
もし相続税の申告内容が間違っていた場合はどうすればいいのでしょう。
まず納めた相続税が少なかった場合には「修正申告」が必要です。この手続きはできるだけ早く行いましょう。遅くなればその分、延滞税が増えてしまいます。さらに税務署の指摘を受けてから修正申告をすると、過少申告加算税が課せられてしまうのです。税務署の指摘の前に自主的に修正申告をしたなら、過少申告加算税はかかりません。
一方、相続税を多く納め過ぎていたときは、「更正の請求」を行います。これにより納め過ぎた税の還付が受けられます。請求の期限は相続税の申告期限から5年以内です。
相続税の申告書に誤りや不明な点がある場合に税務署が行うのが税務調査です。ただこれは強制調査ではありません。納税者の承諾を得て行う任意の調査です。税理士も立ち会えます。
注意したいのは、相続税の場合、税務調査を受ける確率が所得税など他の税金と比べて高い点です。しかもその結果、何らかの「申告漏れ」を指摘されることが多いのです。申告漏れの指摘が多いのは預貯金。名義が被相続人でなかったとしても、被相続人の稼ぎがもとになって築かれた財産の場合は相続税がかかります。故人の収入でためた妻や未成年の子どもの預貯金などがそれに当たります。
●相続税申告は10カ月以内にする必要があるが、まずは3カ月以内に、財産の全貌を把握し、相続をするかしないかを決める必要がある。
●財産の把握は不動産、預貯金・有価証券などの金融財産、生命保険、その他財産などをそれぞれ細かく確認する必要がある。評価額の算出も財産によって基準が違う。
●相続税申告はまず遺産分割協議をし、分割方法を決定した後に申告書の作成に入る。申告書提出にあたっては、必ず用意しなければいけない書類と相続する財産によって準備しなければいけないものがある。
相続税申告の手続きについて解説しました。大切な方が亡くなったあとにやらなければならない手続きの中でも、難易度が高いと言える相続制申告。申告書の作成も複雑なため、自信がない場合はプロの手を借りるのがいいでしょう。
相続税申告の手続きに不安がある場合、プロに相談することも可能です。お困りの際は、税理士・弁護士・行政書士・司法書士の士業ネットワークを持つ「いい相続」にぜひご相談ください。
税理士法人チェスター(https://chester-tax.com/)代表 荒巻善宏(税理士・公認会計士・行政書士)
2004年に公認会計士二次試験に合格。2008年、資産税・相続税専門の税理士法人チェスターを設立。現在は職員総数175名、全国に6拠点展開(三越前、新宿、横浜、大宮、名古屋、大阪)。年間1,000件(累計4,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、低価格で質の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案、事業承継コンサルティング等を行っている。各種メディアやマスコミから取材実績やセミナー講師、テレビ出演の実績多数有り。会計事務所向けの相続税申告の支援を行う「チェスター相続ビジネスクラブ」は3,000名を超える税理士が参加している。主な著者に「相続はこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)」「税理士が本当に知りたい相続相談Q&A(清文社)」等多数。
ご逝去後1年以内を目安に
やらなければならない手続きを期限毎に解説します
準確定申告遺産分割協議
5
2・3ヶ月〜
公正証書遺言遺留分
5
約1〜2ヶ月
遺贈代襲相続
5
約2〜3ヶ月
遺産分割協議書仮払い制度
3
約1ヶ月〜
登記事項証明書所有権移転登記申請書
4
2ヶ月〜
相続財産の評価相続税
5
2ヶ月〜
その他、亡くなったあとの手続きに関する
お困りごとや
ご不明点があれば
お気軽にご相談ください。
「鎌倉新書」は、大切な方がお亡くなりになった後の手続きをワンスップでサポートするサービスです。
死後の手続きについてのお困りごとを専門相談員が解決に向けてお手伝いします(通話料・相談料無料)。
専門家(士業)の
ご紹介
金融機関への連絡と
相続手続き
戸籍収集代行
相続関係図の作成
遺産分割協議書作成
相続財産の
調査・確定
相続税申告
遺品整理
相続や各種手続きなど、
お困りごとがあればぜひ
ご相談ください。
行政書士による各種手続きに関する書類作成・
提出の代行、
税理士による税務相談・申告など
専門家を無料でご紹介しています。