目次
- Q.エンディングノートは、どんなときに役に立つのですか?
- Q.エンディングノートと遺言の違いを教えてください。
- Q.エンディングノートにはどんなことを書けばいいでしょうか。
- Q.エンディングノートは、いつ書けばいいでしょうか。
- Q.エンディングノートはどこで手に入りますか。
- Q.これといった財産や不動産がないのですが、エンディングノートを書いた方がいいのでしょうか。
- Q.今現在は健康ですが、エンディングノートを書く必要はありますか?
- Q.まだ50代なので、エンディングノートを書く必要性を感じないのですが。
- Q.遺言書を準備しているので、エンディングノートを書く必要はないと思いますが、どうでしょうか。
- Q.完成したエンディングノートは、どこに保管しておけばいいでしょうか。
Q.エンディングノートは、どんなときに役に立つのですか?
あなたが急病や事故で亡くなったり、意識がない状態に陥ったとき、その場にあなたの意思をくみ取ってくれる人はいるでしょうか?緊急時の治療方針や死後の葬儀のやり方について、普段から自分の意思を家族に伝えていない場合、あなたの希望を知る人は誰もいないことになります。そんなとき、エンディングノートに自分の意向を書いておけば、それを読んだ家族があなたの希望を叶えることができます。
また、エンディングノートを書くことは、残された人の心残りや悩みを減らすことにも繋がります。家族がエンディングノートを書いていなかった人のエピソードとして、「急遽葬式を行うことになり、私が喪主を務め直葬と決めたが、これで良かったのか」と自問自答しているという話もあります。事前に本人と家族がそれぞれの意向をすり合わせ、エンディングノートという形にしておくことで、どちらにとってもよい終わりを迎えることができます。
Q.エンディングノートと遺言の違いを教えてください。
両者の大きな違いは、法的強制力の有無です。遺言は故人の財産などを誰がどのように引き継ぐかを、書いた本人(遺言者、被相続人といいます)が意思表示した文書です。法的効力があり、大きくは「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に分けられます。
「自筆証書遺言」は、遺言者が紙とペンなどを使って自分で遺言書を書くものです。「公正証書遺言」は、証人2名が立ち会った上で公証人が遺言書を作成するもの。偽造のリスクはありませんが、作成には費用(遺言書に書く財産の合計額による。5000円~4万3000円)が必要です。「秘密証書遺言」は、遺言者が自分で用意した遺言書を2名の証人と共に公正役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらうものです。
遺言書は、正式な書き方・手続きに則って作成しないと無効になる、書ける内容が決まっている、自由に開封できない、作成費用がかかるなど、あまり手軽ではありません。一方エンディングノートは、法的効力がない代わりに、書き方や保管方法など、全て自由に決めることができます。
Q.エンディングノートにはどんなことを書けばいいでしょうか。
法的な効力はありませんので、何を書くのも自由です。ただし、優先的に書いておきたいのは「医療・介護について」の意思でしょう。
急病や事故で意識が回復しない、認知症で会話が難しいなど、本人が意思の表明をできない状態になると、医療の方針についての判断は家族が下すことになります。特に、延命治療を行うかどうかの判断は、そのまま本人の生命に関わる問題のため、事前に家族の間で意思を共有しておく必要があります。
また、2018年11月に公表された「親の終活に関する意識調査
https://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/detail.html?id=4787
」(株式会社鎌倉新書)では、子供側が「終活で一緒に取り組んでおかないと困る」と考えていることのベスト3が、「持ち物の整理」「財産の整理」「お葬式」でした。これらの希望をエンディングノートに書いておけば、いざという時、遺された人たちの助けになるでしょう。
Q.エンディングノートは、いつ書けばいいでしょうか。
エンディングノートを書く適正な時期は、特にありません。しいて言えば、思い立った時にすぐ書くのがよいのではないでしょうか。「高齢になってからでいいか」と後回しにしがちですが、人間いつどこで死ぬかは、わからないものです。後悔を残さないためにも、自分の人生を見つめ直すという意味でも、早くから書き始めるに越したことはありません。
そうは言っても、自分の死を見つめるのは難しいもの。「書くきっかけがつかめない」「書き始めたけど、なかなか進まない…」ということもあるでしょう。たとえば還暦や子供の結婚、孫の誕生など、ライフイベントに合わせて書き始めたり、「誕生日やお正月などの節目には必ず書く」と決めて、少しずつ書き足していく方法もあります。
厳密にいえば、エンディングノートに「完成」という概念はありません。自分の成長や変化に合わせて、死後についての価値観も変わっていきます。その時々に応じて、修正・追加をしていくとよいでしょう。
Q.エンディングノートはどこで手に入りますか。
全国の書店やコンビニ、インターネット通販サイトなどで入手することができます。市販のエンディングノートには、書いておきたい項目が網羅されていたり、詳しい説明が載っていたりします。初めてエンディングノートを書く方にはおすすめです。
さらには、資産運用や相続・介護・葬儀などの必要知識をまとめた解説書がついてくるエンディングノートや、カバーに本革を使い、鍵をかけられる数万円の高級なエンディングノートなどもあります。大型書店には様々な種類のエンディングノートがありますので、中を見比べてみて、自分のお気に入りの一冊を探してみてもよいでしょう。
また、最近は市町村などの地方自治体でエンディングノートを制作するところが増えています。お住まいの自治体でも作っているか、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
ただ、本来はエンディングノートに決まった形式はありません。市販のエンディングノートに興味がなければ、普通の大学ノートなどに自由に書いていってもかまわないのです。
Q.これといった財産や不動産がないのですが、エンディングノートを書いた方がいいのでしょうか。
「遺すような財産がない」という方でも、エンディングノートは書いておいた方がいいでしょう。遺された家族は遺品を処分する際、金銭的な価値がないものでも「どう処理すればいいのか」と悩みます。「全て廃棄処分してほしい」「家電製品は〇〇社に回収してもらいたい」など、細かく書いておくようにしましょう。
また、財産はプラスのものばかりとは限りません。借金を抱えていたり、第三者の連帯保証人になっている場合も、エンディングノートに隠さず書いておく必要があります。自分が相続人であることを知ってから3か月以内なら相続を放棄することもできますので、家族にとっては切実な問題です。
同様に、たとえ遺せる不動産があったとしても、遺族には迷惑なケースもあります。持ち主が亡くなって空き家になった実家の固定資産税を、相続放棄できない子どもが払い続けていることもあります。持ち家がある場合は、その処分方法もエンディングノートに書いておいたほうがよいでしょう。
Q.今現在は健康ですが、エンディングノートを書く必要はありますか?
たとえ若くて健康な方でも、エンディングノートを書いていて困ることはありません。
「デジタル遺品」という問題がありますから、むしろ若い人のほうが書いておくべきだという意見もあります。
「デジタル遺品」とは、故人のスマートフォンやパソコンに遺されたデータのことです。今の若い人は、紙の通帳ではなくウェブ通帳を使っていたり、スマートフォンやインターネットのプロバイダの契約もネットで行うなど、全てをネットで済ませていることも多いでしょう。すると、突然亡くなってしまった際に、どこに支払い停止の電話をすればいいのか、どの会社と契約していたのか、ネットに疎い親世代には全くわからない状況になってしまうこともあるのです。
さらに、故人の友人や知人に葬儀の連絡をしたくても、そもそもスマートフォンのロック解除方法を知らなければ、一人の連絡先もわからない可能性もあります。エンディングノートには、デジタル機器のパスワードなども書いておく必要があるでしょう。
Q.まだ50代なので、エンディングノートを書く必要性を感じないのですが。
どんな年齢の人にも、エンディングノートを書くメリットはあります。上述の「デジタル遺品」問題など、「遺された人に迷惑をかけないため」という理由もありますが、もっと前向きな目的もあります。
それは、「自分の人生と向き合う」ということです。50代でしたら、今までの自分の生き様を振り返る「自分史」を書いてもいいかもしれません。「死ぬまでにしたいことリスト」を考えてみるのもよいでしょう。2007年に後悔された『最高の人生の見つけ方』、2003年の『死ぬまでにしたい10のこと』などの映画では、死を前にした主人公が「死ぬまでにしたいことリスト」を作るシーンが出てきます。自分の死と向き合うことで、それまでの人生で勇気がなくてできなかったこと、やり残したことに次々と挑戦し、むしろ以前より充実した日々を送るようになるのです。死を考えることが、悔いのない人生を生きるために有効だというメッセージが込められてるように思います。
Q.遺言書を準備しているので、エンディングノートを書く必要はないと思いますが、どうでしょうか。
遺言を準備している人にとっても、エンディングノートには意味があります。それは、遺言を補足する役割です。エンディングノートに法的効力はありませんが、だからこそ自由に自分の思いを綴れるという利点があります。
遺言書は、解釈の違いが生まれないように正確な言葉で書く必要があり、どうしても堅苦しい文面になってしまいます。たとえば、家族それぞれに遺す財産が違う場合、その理由を遺言書にこまごまと書くことはできません。そのため、相続自体は遺言書に則って問題なく進んだとしても、場合によっては家族間で感情のしこりが残ることも考えられます。
そんなとき、エンディングノートに補足として、「なぜ娘に家を遺すことにしたのか」「息子に車を遺すことにしたのか」などの理由を自分の言葉で書いていたとしましょう。すると家族は「どうして僕には家をくれなかったんだろう」などと無用な憶測をすることなく、納得して受け入れることができるでしょう。
Q.完成したエンディングノートは、どこに保管しておけばいいでしょうか。
エンディングノートを保管するのに決まった場所はありませんが、盗難に遭いにくく、家族や親しい人が見つけやすい場所がベストです。たとえばリビングのテーブルなどに堂々と置いてしまうと、万が一泥棒が入ったときに、資産状況や金庫の暗証番号などを知られてしまうことにもなりかねません。かといって、貸金庫などに厳重に保管するのも考えものです。盗難の心配はありませんが、本人以外が貸金庫を開けるには煩雑な手続きが必要です。緊急時に家族が取り出せなければ、本末転倒になってしまいます。
また、エンディングノートの存在を家族に伝えておくことも重要です。存在を知らなければ、探すこともできません。必ず、親しい家族とエンディングノートの保管場所を共有しておきましょう。
エンディングノートを見る相手ごとに数冊書き、別々の場所に保管する方法もありますが、「各冊子で内容に矛盾がある」「どうしても一冊見つからない」などの無用な混乱を生む可能性もあります。できるだけ一冊にまとめたほうがよいでしょう。